2012年10月2日火曜日
放射能に汚染された酪農家の家族は、“家族の一員”だった牛を手放し、祖先が眠る墓と家を残して村を去った
―――*原発廃止*―――
*即・原発を廃止しても、使用済み燃料や原子炉廃材の放射能と100万年!
*低線量被曝に関しては、ECRR(欧州放射線リスク委員会)の「2010年勧告」を基調にする。
*国家権力の横暴を許さず、主権者である国民の命と生活を守る政権の樹立を!
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9/11日本学術会議による高レベル放射性廃棄物の処分に関する『提言』
今晩(10月1日)午後7時30分から放映された「クローズアップ現代」(NHK総合TV)は、『10万年の安全は守れるか~行き場なき高レベル放射性廃棄物~』と言うタイトルで、去る9月11日に日本学術会議が原子力委員会に提出した「提言」をベースに、高レベル放射性廃棄物処分の問題を取り上げました。
そもそも我が国において発生する「高レベル放射性廃棄物」については、2000年に成立した「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」により、いわゆる「地層処分」によって最終処分を行うことが基本方針と定められています。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H12/H12HO117.html
同法第二条に、「この法律において「最終処分」とは、地下三百メートル以上の政令で定める深さの地層において、特定放射性廃棄物及びこれによって汚染された物が飛散し、流出し、又は地下に浸透することがないように必要な措置を講じて安全かつ確実に埋設することにより、特定放射性廃棄物を最終的に処分することをいう」とあるのが定義規定です。
経済産業省・資源エネルギー庁・放射性廃棄物等対策室は、「放射性廃棄物のホームページ」なるものまで作って、「地層処分」の受入先を確保しようとやっきになっていました。
http://www.enecho.meti.go.jp/rw/
その「理解促進活動」のために国は大枚の予算を計上し、様々な行事を開催してきました。
http://www.enecho.meti.go.jp/rw/rikai/rikai00.html
その中には、「双方向シンポジウム」なるものも含まれており、3.11の4ヵ月ほど前の2010年11月20日に岡山市で開かれたシンポジウムには、「地層処分」反対派として、小出裕章さん(京都大学原子炉実験所助教)が参加されていました。
http://ho-hi.com/dousuru-hlw/okayama.html
※「小出裕章プレゼンテーション」などをクリックすると、ウィンドウズ・メディア・プレイヤーが立ち上がって映像を視聴できますし、「当日配布資料」のpdfファイルもダウンロードできます。
ちなみに、このシンポにおいて、「地層処分」推進派として登壇した梅木博之という人が、今日の「クローズアップ現代」でも、推進派研究者としてインタビューに応えていました。
実は今回取り上げる、「地層処分」の見直しを求めた日本学術会議の高レベル放射性廃棄物の処分に関する「提言」(9月11日)のきっかけとなった、2010年9月7日付・原子力委員会から日本学術会議宛「審議要請」も、放射性廃棄物の最終処分についての、以上のような国の推進施策の一環として、「地層処分」に関する国民的理解を得るために「お知恵拝借したい」という目的でなされたものだったと思われます。
まずは、その原子力委員会から日本学術会議宛の依頼書をご覧下さい。
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-k159-1-shingi.pdf
この依頼に対する日本学術会議の「高レベル放射性廃棄物の処分に関する取組みについて(回答)」(2012年9月11日)は以下のとおりです。
回答書(かがみ)
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-k159-1-kaito.pdf
回答書(本文)
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-k159-1.pdf
(42頁)
日本学術会議では、依頼から1年後の2011年9月までに回答書をとりまとめる方針であったようですが、検討開始から約半年後の2011年3月11日に福島第一原発事故が発生するに及び、検討を一時中断して「原子力発電所事故の影響およびエネルギー政策の方向性を一定期間見守る」ための時間を置き、あらためて検討した結果を今般取りまとめたということのようです。
「回答書」自体は、資料を含めて40頁以上もありますので、その内、冒頭「要旨」に掲げられた「提言」の部分をとりあえず引用します。
(引用開始)
提言の内容
原子力委員会委員長からの依頼である「高レベル放射性廃棄物の処分の取組みにおける国民に対する説明や情報提供のあり方についての提言のとりまとめ」に対し、本委員会は以下の6つを提言する。なお、本提言は、原子力発電をめぐる大局的政策についての合意形成に十分取組まないまま高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定という個別的課題について合意形成を求めるのは、手続き的に逆転しており手順として適切でない、という判断に立脚している。
(1) 高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策の抜本的見直しわが国のこれまでの高レベル放射性廃棄物処分に関する政策は、2000 年に制定された「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づき、NUMO をその担当者として進められてきたが、今日に至る経過を反省してみるとき、基本的な考え方と施策方針の見直しが不可欠である。これまでの政策枠組みが、各地で反対に遭い、行き詰まっているのは、説明の仕方の不十分さというレベルの要因に由来するのではなく、より根源的な次元の問題に由来することをしっかりと認識する必要がある。また、原子力委員会自身が2011年9月から原子力発電・核燃料サイクル総合評価を行い、使用済み核燃料の「全量再処理」という従来の方針に対する見直しを進めており、その結果もまた、高レベル放射性廃棄物の処分政策に少なからぬ変化を要請するとも考えられる。これらの問題に的確に対処するためには、従来の政策枠組みをいったん白紙に戻すくらいの覚悟を持って、見直しをすることが必要である。
(2) 科学・技術的能力の限界の認識と科学的自律性の確保
地層処分をNUMO に委託して実行しようとしているわが国の政策枠組みが行き詰まりを示している第一の理由は、超長期にわたる安全性と危険性の問題に対処するに当たっての、現時点での科学的知見の限界である。安全性と危険性に関する自然科学的、工学的な再検討にあたっては、自律性のある科学者集団(認識共同体)による、専門的で独立性を備え、疑問や批判の提出に対して開かれた討
論の場を確保する必要がある。
(3) 暫定保管および総量管理を柱とした政策枠組みの再構築
これまでの政策枠組みが行き詰まりを示している第二の理由は、原子力政策に関する大局的方針についての国民的合意が欠如したまま、最終処分地選定という個別的な問題が先行して扱われてきたことである。広範な国民が納得する原子力政策の大局的方針を示すことが不可欠であり、それには、多様なステークホルダー(利害関係者)が討論と交渉のテーブルにつくための前提条件となる、高レベル放射性廃棄物の暫定保管(temporal safe storage)と総量管理の2つを柱に政策枠組みを再構築することが不可欠である。
(4) 負担の公平性に対する説得力ある政策決定手続きの必要性
これまでの政策枠組みが行き詰まりを示している第三の理由は、従来の政策枠組みが想定している廃棄物処分方式では、受益圏と受苦圏が分離するという不公平な状況をもたらすことにある。この不公平な状況に由来する批判と不満への対処として、電源三法交付金などの金銭的便益提供を中心的な政策手段とするのは適切でない。金銭的手段による誘導を主要な手段にしない形での立地選定手続きの改善が必要であり、負担の公平/不公平問題への説得力ある対処と、科学的な知見の反映を優先させる検討とを可能にする政策決定手続きが必要である。
(5) 討論の場の設置による多段階合意形成の手続きの必要性
政策決定手続きの改善のためには、広範な国民の間での問題認識の共有が必要であり、多段階の合意形成の手続きを工夫する必要がある。暫定保管と総量管理についての国民レベルでの合意を得るためには、様々なステークホルダーが参加する討論の場を多段階に設置すること、公正な立場にある第三者が討論過程をコーディネートすること、最新の科学的知見が共有認識を実現する基盤となるように討論過程を工夫すること、合意形成の程度を段階的に高めていくこと、が必要である。
(6) 問題解決には長期的な粘り強い取組みが必要であることへの認識
高レベル放射性廃棄物の処分問題は、千年・万年の時間軸で考えなければならない問題である。民主的な手続きの基本は、十分な話し合いを通して、合意形成を目指すものであるが、とりわけ高レベル放射性廃棄物の処分問題は、問題の性質からみて、時間をかけた粘り強い取組みを実現していく覚悟が必要である。限られたステークホルダーの間での合意を軸に合意形成を進め、これに当該地域への経済的な支援を組み合わせるといった手法は、かえって問題解決過程を紛糾させ、行き詰まりを生む結果になることを再確認しておく必要がある。 また、高レベル放射性廃棄物の処分問題は、その重要性と緊急性を多くの国民が認識する必要があり、長期的な取組みとして、学校教育の中で次世代を担う若者の間でも認識を高めていく努力が求められる。
(引用終わり)
なお、本文の内、「地層処分」の抜本的見直しの必要性を述べた部分を抜き出してご紹介します。
(引用開始)
回答を作成するに際しての本委員会の基本的な考え方は以下の通りである。
本回答において、「高レベル放射性廃棄物」とは、使用済み核燃料を再処理した後に排出される高レベル放射性廃棄物のみならず、仮に使用済み核燃料の全量再処理が中止され、直接処分が併せて実施されることになった場合における使用済み核燃料も含む用語として使用する。
日本学術会議への原子力委員会からの依頼においては、これまでの政策的枠組みとそれを担う組織の存在を前提にして、「高レベル放射性廃棄物の処分に関する取組みについての国民に対する説明や情報提供のあり方について」の意見の提出が求められていた。しかし、東日本大震災により、地層処分の是非を判断するに際しての背景事情が大きく変化したと考えられる。従来も、巨大地震やそれに
よる津波を懸念する声はあったが、防災対策や原子力発電所の安全確保に際して、一定規模以上の自然災害の生起については想定されていなかった。その大きな理由の1つは、それを示唆する事実はあったものの生起の可能性は十分低いとして工学的考慮事項として想定しなかったことにあると考えられる。東日本大震災はこの考え方を覆し、自然現象の不確実性を適切に考慮すべきという強い警鐘を
鳴らしたと言える。
大地震により地殻の変動が生じた、あるいは生じつつあることが、複数の研究機関から報告されており、文部科学省の地震調査研究推進本部も地震発生確率の見直しの必要性を認め、実際にその作業に着手している。少なくとも、こうした取組みの結果として明らかになるであろう科学的知見は、今後の高レベル放射性廃棄物の処分において確実に考慮されるべきであり、わが国における放射性廃棄物の処分政策がこれまで採用してきた地層処分の処分概念や処分地選定のあり方にも、改めて再考の必要が生じていると考えられる。
(引用終わり)
以上の基本方針を踏まえてなされた「提言(3)」が、「暫定保管」と「総量管理」という考え方です。この内、「暫定保管」を提言した部分を引用します(長くなり過ぎるので「総量管理」の部分は引用しませんが、この部分も是非読んでいただきたいと思います)。
(引用開始)
「暫定保管」というモラトリアム期間の設定
社会的な合意形成に立脚して問題を解決するためには、意思決定の手順と合意形成の道を、それぞれ多段階で構想する必要があり、最終的な処分に至るまでの1つの段階として、高レベル放射性廃棄物の暫定保管(temporal safe storage)によるモラトリアム(猶予)期間の設定を考慮すべきである。
ここでいう高レベル放射性廃棄物とは、使用済み核燃料を再処理した後に排出される高レベル放射性廃棄物のみならず、仮に使用済み核燃料の全量再処理が中止され、直接処分が併せて実施されることになった場合における使用済み核燃料も含む。
高レベル放射性廃棄物への対処をめぐって、大局的な次元の諸問題についての合意が欠如している段階で、いきなり具体的な施設の立地点の選定作業に入ることは、これまでの経過が示しているように、問題解決につながらないと考えられる。まず、大局的な方針や原則についての合意を形成し、これに立脚して、個別課題について合意に基づいた意思決定を積み重ねていく手順を構想すべきである。
そして、この意思決定の積み重ねという考え方は、高レベル放射性廃棄物の管理手順と密接に関係し、暫定保管という対処方式が導き出される。暫定保管とは、「高レベル放射性廃棄物を、一定の暫定的期間に限って、その後のより長期的期間における責任ある対処方法を検討し決定する時間を確保するために、回収可能性を備えた形で、安全性に厳重な配慮をしつつ保管すること」である。この意味で、暫定保管は暫定的責任保管と言いかえることもできる。
暫定保管という管理方式は、いきなり最終処分に向かうのではなく、問題の適切な対処方策確立のために、数十年から数百年程度のモラトリアム期間を確保することにその特徴がある。この期間を利用して、技術開発や科学的知見を洗練し、より長期間を対象にした対処方策を創出する可能性を担保するメリットがもたらされる。
例えば、こうして確保した時間的猶予を利用して、容器の耐久性の向上や放射性廃棄物に含まれる長寿命核種の核反応による半減期の短縮技術(核変換技術)といった、放射性廃棄物処分の安全性における確実性を向上させる研究開発を進め、処分方式に反映させることができる可能性がある。「核変換技術」を高レベル放射性廃棄物に適用して、短寿命核種に変えてから保管すれば、およそ千年間で、自然界と同じ程度の放射線レベルにまで下がり、さらに確実な管理ができるとされている。もち
ろん、現段階ではこれを最終処分に確実に活かすことができる確証はないが、JAEA(日本原子力研究開発機構)等の関係する研究機関で積極的に技術開発に取り組み、成果を得ることが期待される。
また、地層の安定性に関する研究も、このモラトリアム期間にさらなる進展が求められる。
さらに、暫定保管は、回収可能性を備え、他への搬出可能性があるため、そうした可能性が開かれていない最終処分と比較すれば、施設立地にあたって、より説得力ある政策決定手続きをもたらす可能性がある。
ここで、暫定保管という考え方は、いわゆる中間貯蔵とは異なることに注意を喚起しておきたい。中間貯蔵は原子力発電から発生する使用済み核燃料を再処理する、もしくは再処理によって排出された高レベル放射性廃棄物のガラス固化体を最終処分するというように、あらかじめ貯蔵終了後の処理・処分の方法を定めた上で、30~50 年間、安全に貯蔵・管理することをいう。したがって、将来の時点での様々な選択を可能とするために、保管終了後の扱いをあらかじめ確定せずに数十年から数百年にわたる保管を念頭に置く暫定保管とは異なる。
ところで、「はじめに」でも述べたように、高レベル放射性廃棄物は増加を続けており、2011 年12 月末時点で、青森県六ヶ所村と茨城県東海村にて、ガラス固化体合計1,780 本が保管されている。さらに、同時点で、海外に再処理を委託した結果発生したガラス固化体のうち、未返還分が約872本分存在するほか、再処理をすれば約24,700 本のガラス固化体が生み出される使用済み燃料が、各地の原子力発電所と青森県六ヶ所村の再処理工場に存在している。また、各発電所等の使用済み燃料プールの容量は、単純計算をした場合、それぞれの発電所をこれまで通り運転をすると約6年で満杯となる計算である(実際には、使用済み核燃料を収容する余地は発電所ごとに異なり、ところによってはまもなく満杯となるものもある)。
こうした状況から、暫定保管が実現するまでの間の高レベル放射性廃棄物の安全な管理は喫緊の課題であるが、これについては従来よりも少しでも安全な保管方法を見いだし、不断に安全性の向上を図りながら慎重に管理を継続するほかに方法はない。諸外国においては、このために様々な対応策が提案・実行されている。例えば、アメリカにおいては使用済み核燃料のプールにおける保管を改め、乾式(ドライキャスク)貯蔵するとの政策転換がNRC(原子力規制委員会)から打ち出されたほか、スウェーデンのように、堅固な岩盤層に国内の使用済み核燃料を集中管理する地下施設(集中中間貯蔵施設:CLAB)を設けてすでに25 年以上の保管実績を持つ国もある。わが国においても、暫定保管に移行するまでの間のより安全な保管方法について、賢明な選択をするべきである。なお、検討にあたっては、自然災害への耐性、テロ対策等、多様な観点から保管方法の安全性を十分検証し、その結果を公表して、国民が納得できるよう対応していくべきである。
(引用終わり)
「地層処分」を抜本的に見直し、「暫定保管」を提言した日本学術会議ですが、その「暫定」として想定されている期間が「数十年から数百年」というのですから、それだけでも気が遠くなり、これ以上、1グラムたりとも「高レベル放射性廃棄物」を増やしてはならない、という結論に至るのが当然だと思うのですが。
なお、この「回答書(提言)」の取りまとめの中心となった今田高俊・東京工業大学大学院教授が、9月21日、日本記者クラブに招かれて記者会見を行っています。
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2012/09/r00024829/
You Tube http://www.youtube.com/watch?v=CebDGsunvOk&feature=plcp (1時間38分57秒)
岡山でのシンポジウムをご紹介したとおり、かねてから「地層処分」には絶対反対の立場を貫いてきた小出裕章さんが、「たね撒きジャーナル」に電話出演して、この「提言」についてコメントされています。小出先生としては、「なにを今さら」という気持ちだったでしょうね。
「ぼちぼちいこか。。。」より
http://bochibochi-ikoka.doorblog.jp/archives/3552490.html
もっとも、日本学術会議がこのような「提言」をしたからといって、何かが公的に変わったということでは少しもありません。
なにしろ、高レベル放射性廃棄物の「最終処分」は、「地下三百メートル以上の政令で定める深さの地層において(中略)安全かつ確実に埋設する」と定めた法律が厳然として生きているのですからね。
次は、この法律を改正するとともに、これ以上放射性廃棄物を増やさない取組(原発を止める、稼働させない、建設させない)がいよいよ必要となります。
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