2013年1月6日日曜日

三春町ヨウ素剤決断「あなたは知事の権限を持ってるんですか」というふうに反論させてもらった」

―――*原発廃止*―――
*即・原発を廃止しても、使用済み燃料や原子炉廃材の放射能と100万年!
*低線量被曝に関しては、ECRR(欧州放射線リスク委員会)の「2010年勧告」を基調にする。
*国家権力の横暴を許さず、主権者である国民の命と生活を守る政権の樹立を!
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「メルマガ金原」No.1224(一部省略)
三春町の4日間(安定ヨウ素剤配布・自治体の決断)
 皆さんは、福島県田村郡にある三春町(みはるまち)と聞いて何を思い出されるでしょうか?
 国の天然記念物で日本三大巨桜の一つと言われる「三春滝桜」でしょうか?
  http://www.takizakura.com/
 あるいは、芥川賞作家・玄侑宗久(げんゆう・そうきゅう)氏が住職を務める臨済宗のお寺のある町としてでしょうか?  http://www.genyu-sokyu.com/
 脱原発運動に関わっておられる方なら、武藤類子(むとう・るいこ)さんが三春町在住であったことを思い出されるかもしれませんね。
  http://www.youtube.com/watch?v=5xdszFXI2J0

 私にとっての三春町は、何よりも、2011年4月、福島県及び厚生労働省の要請により、和歌山県から派遣された保健支援チーム(40歳以上の医師1人、保健師2人、薬剤師1人、事務職員1人の5人1組が保健所単位で構成され、ローテーションを組んで派遣された)の一員として、保健師である私の家内が赴いた先が三春町だったということです(主に富岡町から避難された住民を担当)。

 さらに、三春町の名前が忘れられないものになったのは、町民を放射性ヨウ素による被曝から守るため、国や県からの指示を待たず(そんなものは結局無く、指示を待っていた自治体はあたら住民を無防備に被曝させてしまったのですが)、3月15日、独自に入手した安定ヨウ素剤を40歳未満の町民に配布して服用を勧めた福島県で(というか全国で)唯一の自治体だったことによります。

 私がそのことを詳しく知ったのは、「DAYS JAPAN」2011年9月号に掲載された「緊急アンケート 各自治体は小児甲状腺がんの危険にどう対処したか?」を読んだ時でした。
 「DAYS JAPAN」からのアンケートに回答した自治体の中でも、「県からの指示でヨウ素剤は受け取っていました。しかし、その指示が不明瞭であったため使用する機会はありませんでした」(飯舘村)、「国の指示はない。県から届いたヨウ素剤のため、県の指示を待ったが、現在までない」(川俣町)、「福島県から供給を受け、原子力災害対策本部の指示により服用する旨の通知がありましたが、結果的に服用の指示はなく市民への配布はしておりません」(田村市)などという回答が目立ち、住民に配布したところでも、「ヨウ素剤の服用については、通信手段がなかったので国からの指示はありませんでした。ヨウ素剤については住民からの要望があったため40歳未満の希望者の方に副作用がある旨を伝え、3月12日、配布数量1人1回分、パンフレットと一緒に配布しました。服用については、自己判断に任せました」(富岡町)、「安定ヨウ素剤の配布については、避難所において、他の市町村から避難されている方に出身自治体がすでに配布していたこと、なぜ配布しないのかという市民の不安な気持ちに応える必要があったこと、さらには、市民が万が一高い濃度の放射能物質にさらされた場合に備えるために配布したものです。また、安定ヨウ素剤の配布にあたりましては、県からの配布指示がない中で、市が独自の判断で配布することにしたものであり、市からの指示があるまで服用はしないことを条件に配布したものです」(いわき市)など、結局、服用するかどうかは
住民自身で判断するしかなかったようです。
 これに対し、三春町からの回答は以下のとおりでした。
「三春町では、40歳未満の町民7,248人(3,303世帯)を対象に、3月15日午後1時から午後6時まで、町内8カ所で安定ヨウ素剤を配布し、同時に服用を勧めました。配布について、国・県からの指示は全くありません。町の判断で実施いたしました。これは、県に対して放射線量の公表を求めても回答を得られない状況のなか、15日の天気が、東からの風と午後からの降雨が予想されたため、放射線量は不明でしたが、今までにない『高線量』であることは間違いなく、町民の安心と安全を確保するために決断したものです。三春町には、安定ヨウ素剤の備蓄はありませんでしたので、配布前日の14日に県から譲与を受けました。併せて、町内の医師や薬剤師に投与の是非や副作用について意見を求め、配布の参考といたしました。副作用は、現在に至るまで確認されておりません」

 3月15日の40歳未満の町民への安定ヨウ素剤の組織的配布と服用勧奨に自らの判断と責任で踏み切った三春町の決断を追ったNHKのドキュメンタリー番組があります。削除される可能性がありますので、是非早めに視聴されることをお薦めします。また、「みんな楽しくHappy♡がいい♪」に、3本に分割された動画に対応した内容書きだしがアップされていますので、併せてご紹介します。

NHK総合TV 2012年9月30日放送 
証言記録東日本大震災
福島県三春町ヨウ素剤決断に至る4日間

その1
映像(14分30秒)
 http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=hJfMLXEPXuQ
内容書き出し
 http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-2602.html

その2
映像(14分30秒)
 http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=_-dxlS0ND9w
内容書き出し
 http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-2603.html
その3
映像(14分01秒)
 http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=gXZlgKupaBI
内容書き出し
 http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-2605.html

 また、tweet のまとめをアップしてくれている人がいます。
 http://togetter.com/li/382244

 非常に感銘深く視聴しましたが、私の家内が保健師ということもあって、三春町の保健師・竹之内千智(たけのうち・ちさと)さんの以下の発言を重く受け止めました。

(引用開始)
やっぱりこれは、基本的に劇薬ですし、お薬っていうのは医師の処方があって初めて出せるものだし、服薬させられるものなので、私たちは看護職なので、自分たちだけで薬を飲ませるっていうのは、基本的には無い行為ですよね。なので、万が一何かあって、責任を問われた時に、やっぱり「自分の保健師、看護師、助産師の職業生命が絶たれる可能性もあるな」とは思いましたね。
(引用終わり)

 それから、「その3」の中で、3月15日の午後5時ころ、福島県の地域医療課の担当者が三春町の保健福祉課長に電話をかけてきて、「国や県の指示なく安定ヨウ素剤を住民に配布してはいけない、医師の立ち会いも必要なはずだ、ヨウ素剤を回収せよ」と指示してきたというエピソードが語られるのを視聴して、あまりのことに怒りにふるえました。
 当事者の一方の証言を聞いただけで断定するのはアンフェアのそしりを免れないかもしれませんが、唯一住民に安定ヨウ素剤を組織的に配布して服用を勧めた三春町に対して、このような県の「妨害工作」があったのだとすると、結局、ヨウ素剤は入手したものの、住民に服用させることなく時機を逸した大多数の市町村に対しても、福島県から、「国や県の指示なく勝手に住民に配布してはいけない」という指示があったのだろうということが相当強く推測されます。「DAYS JAPAN」のアンケートに対する先述の川俣町や田村市の回答内容はその傍証となるでしょう。

 また、たまたま三春町に避難してきた大熊町の防災担当職員に臨時アドバイザーとして協力してもらい、その職員が(当然インターネットを通じてでしょう)、オーストリアの研究機関がつくった拡散予測をみつけて三春町の判断資料として提供したというエピソードも印象深いものでした(SPEEDIはどうした?とあらためて思います)。

 また、この番組の中でも語られ、また「DAYS JAPAN」に対する回答にもあったように、富岡町は、避難指示のため、町としての組織的な服用指示はできなかったものの、40歳未満の希望者だけとはいえ(NHK番組などを見ると、あながち希望者だけでもなかったようですが)、住民にヨウ素剤を配布し、服用判断は個々の住民に委ねるという措置をとっていました。
 これは、強制避難となった自治体の取り得る最善とまでは言えないかもしれませんが、「出来るだけのことはした」措置と評価し得るのではないかと思います。

 思えば、三春町のような決断・措置を行うためには、その前提として、役場機能がしっかりと機能していなければなりません。それだけではなく、大多数の住民に町の決定を伝えるために、自治会組織や防災無線などもフル活用したようです。そのような機能が生きていればこそ、配布開始から約5時間で対象住民の95%にヨウ素剤の配布を終えることができたのです。
 次々と拡大される避難指示の圏内となった自治体にとって、これらの前提そのものが失われているのですから、服用判断は住民に委ね、とにかくヨウ素剤だけは配布しておくというのが、出来ることの精一杯だったかもしれないのです。

 今後の原子力防災指針の中で、安定ヨウ素剤の配布・服用指示をどうするかということが原子力規制委員会で検討されているようですが、今回の福島第一原発事故の教訓を踏まえれば、国や県の一元的な指示による(指示がなければ配布も服用もさせない)などということが、現実問題としては機能しないことだけは確かなことだと思います。
 そのことを深く認識するためにも、最後に、三春町保健福祉課長の証言(県の担当者とのやりとり)を、もう一度、「みんな楽しくHappy♡がいい♪」の内容書き出しから引用しておきましょう(一部金原が校正しています)。

(引用開始)
配布が終わりに近づいた午後5時ごろ、保健福祉課長の工藤さんのもとに県の職員から一本の電話ががかかってきました。

工藤浩之さん 保健福祉課長(当時):
「誰の指示で配ってるんですか」って言うもんですから、「いや、町の責任で町長の指示で動いています」って言ったら、「これは国とか県の対策本部からの連絡があって、指示があってはじめて配れる薬なんだよ」と、「ましてや医療関係、お医者さんって言ったかな、お医者さんの立ち会がないと配れない薬なのに、それをどうして配ってるんだ」って言うんで、「いや、国・県は指示系統がめちゃくちゃじゃないですか」と、「あとお医者さんの指示っておっしゃったけど、よく読んでいくと医療関係者、各避難所には医療関係者を配置しなさいとは書いてあるんで、医師には限定してないはず
だ」と、「医師には特定していないはずです」というふうなことで、やっぱり反論させてもらいました。で、地域医療課の一担当職員だったもんですから、「回収を指示します」って強い口調でおっしゃったので、「指示となると知事命か何かのはずです」と。「あなたは知事の権限を持ってるんですか」というふうに反論させてもらったところ、彼は「いや、こういう緊急事態ですから、私の一存で回収を指示します」っておっしゃったんですね。「であれば私は聞けません」というふうに反論させてもらって、あとは押し問答です。「回収しろ」「回収できません。もう飲ませてあるんで回収できません」って。あとは一方的に「回収して下さい」って言ったまま向こうの方から電話を切っちゃ
いましたので、もうそのまま続行しました。

配布は午後6時に終了。最終的に3303世帯中95%が薬を手にしました。予報通り夕方からは雨模様となりました。
(引用終わり)
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